奏者インタビューシリーズ4 有馬圭亮

2023年3月25日ロームシアター 京都ノースホール 公演「エンカウンター」に先立ち、ロゼッタ主宰の橋爪が演奏家メンバーにインタビューを行いました。第四回は立ち上げ公演以来のメンバーで、左手のピアニスト、有馬圭亮さんにお話を伺いました。

橋爪:左手ピアノ、ギター、マンドリンのための室内楽作品を公募する演奏会企画を、2016年に京都芸術センターで開催し、その後発展的にロゼッタを結成したわけですが、有馬くんはその企画から参加してくれている唯一のメンバーです。公募によって集まった新曲を演奏する感覚ってどんな感じですか?

有馬:どの曲も力作で演奏も覚悟がいります。最初はわからないことだらけ、知らない言語を読んでいる気分です。自分のパートの練習を最初はゆっくり、徐々に指定のテンポで、、ものすごく当たり前のことですが、これをひたすら繰り返しているうちに音が体に入ってきます。そして作品の内面に近づくために何度も音を鳴らしながら試行錯誤します。

橋爪:特に左手ピアノの室内楽というのは、独奏に比べてかなりレパートリーが少なく、様々な側面で、自主的に開発していく必要がありますよね。今回演奏するTomas FriebergさんのUguisu Variationはどんな印象ですか?スウェーデンの作曲家で、普段はライブラリアン(図書館司書)として働きながら作曲活動を行っているそうです。現在はなんと日本に語学留学中だそうで、ウグイスを題材に扱っていることからも、日本へ深い興味をもたれている印象です。

有馬:Uguisu Varioationは独特な響きの世界と柔軟さを感じる、今回お気に入りの作品です。

橋爪:手書きの記譜が独特の世界観を醸し出していますよね。こういった公募作品を演奏するために、みなさんがおそらく知らない作曲家や作品の曲を楽しむためにはどういう空間が必要なんだろう、という部分を試行錯誤しているのがロゼッタの活動なのですが、奏者としてはどういう印象を持っていますか?

有馬:会のコンセプトは毎度楽しみです。その思想に理解があやふやな時はありますが。終わってみると深く、面白い会だったといつも振り返っています。演出で印象的だったのは、会場を歩きながら好きな場所で鑑賞できた会。それは子どもの時にやりたかったことでした。

橋爪:前回の公募はそういうコンセプトの作品を公募しましたね。今回もそういう機会をお客さんに提供できるのでは?と思っています。実際前回も子供さんが寝ながら聞いていたり、ということがありましたね。普通のコンサートに比べるとどういうところが魅力だと思いましたか?

有馬:最近、情報がとっ散らかっていて集中する時間が少ないのでは?と思ったりします。私も世間も。音楽鑑賞すらも情報収集のようになっているのではーーーと思う。 ロゼッタの演奏会は没頭する世界です。それはハッピーな時間の過ごし方と思うんです。

橋爪:そうであってほしいと思って制作しています。奏者側の目線としては、どういうモチベーションでロゼッタに参加してくれていますか?

有馬:私は普段古典的な作品を演奏する機会が多いので、新しい作品を扱うロゼッタの活動は発見と柔軟さが得られるものです。アンサンブルの編成も気に入っています。 ロゼッタの中にいるとピアノに新しい音を求められていると感じます。左手のピアノ音楽の分野からみると歴史的に重要になる作品が生まれている現場ともいえるでしょう。

橋爪:元々が左手ピアノ、ギター、マンドリンといった、室内楽分野においてややレパートリーが弱いというと語弊がありますが、メインストリームにいない楽器が集まってともに活動していくことを想定していましたから。今はそこがメインだとは考えていないのですが、引き続き大事に思っている部分ではあります。最後に、ロゼッタ エンカウンターに興味を持つみなさまに一言をお願いします。

有馬:音楽は常に進化を続けていて、その進化を体感できるのがロゼッタのコンサートです。感動と驚きの時間をお届けします。お楽しみに!3/25は是非ご来場ください。

「エンカウンター」は世界各国の作曲家による新作を演奏する公演です。
3/25ロームシアター 京都ノースホールにぜひおこしください!

有馬圭亮(ありまけいすけ)
https://www.instagram.com/chopin0519/

左手のピアニスト。1989年生まれ。大阪教育大学在学中に 局所性のジストニアを発症し、左手によるピアノ演奏を始める。アーティストのコミュニティ「Art village」主宰。世界のローカル音楽のネットワーク作りにも取り組む。活動のテーマは旅・音楽・メディア。