2023年3月25日ロームシアター 京都ノースホール 公演「エンカウンター」に先立ち、ロゼッタ主宰の橋爪が演奏家メンバーにインタビューを行いました。第二回は立ち上げ公演以来のメンバーで、サクソフォン奏者の日下部任良さんにお話を伺いました。
橋爪:エンカウンター」では、公募による作品を中心に演奏を行いますが、日下部さん担当の作品の一つ「Synthetics 3 – Shifting」は、イタリア出身、ドイツ在住の作曲家、Christian Ferlaino(クリスティアン・フェルライーノ)の作品です。ジャズ・サクソフォニストでもある彼の作品、どのような印象ですか?
日下部:作品タイトルは直訳すると「合成物質、3つの変移」みたいな感じになるのかなと思います。作品のありかたとしては、サクソフォンとクラリネットがそれぞれ独立しつつも常に関係性を意識して存在しています。その有り様は日常に使われる「物」以前の「何か」が、有機的に関わりあったり、無関心だったり、突然活発になったり…。未知の小さな生物?がウヨウヨ、ぴょこぴょこしているようにも感じます。聴いている方にはどのように聴こえるのでしょうか?
橋爪:どのように聞こえるか楽しみですね。ロゼッタの演奏会では斬新な作品の演奏はもとより、それらの作品をどのように提示するか、についていつも様々なアプローチをとっています。日下部さんはそういったアプローチに対し、どのように感じていますか?
日下部:「作品」を「演奏する」というよりは、「音楽を素材に空間をデザインする」という印象、魅力があると思います。形式的なコンサートのあり方にとらわれず、それは言い換えるとただ座って演奏を受容すると言うことにとどまらず何かしら能動的にお客さんが演奏に、演奏の中に参加するような感覚に近いのですが…。コンサートホールや室内楽ホールで音楽を聴く、というよりは、音楽という作品を自ら歩き回って鑑賞する、美術館に感覚的には近いかもしれません。座布団やソファなどを敷いて開演した公演もありましたね!
橋爪:そうですね!音楽を表現し、共有する方法をデザインしている感覚で制作しています。 ロゼッタはオーケストラにいない楽器がほとんどと編成もかなり特殊、活動内容も一般的な団体とは違っています。日下部さんは広島ウインドオーケストラでの活動や、近年も大阪フィルハーモニー交響楽団のボレロに乗ったりと、メインストリームのオーケストラやアンサンブルでの活動もされていますが、日下部さんにとってロゼッタはどの様な活動の場となっていますか?
日下部:自分だけではやらない、なかなか関わらないであろう作品と交流する場。そして表現の可能性を探究する場、音楽のある空間とは?を意識する場となっています。特に、ギターやマンドリンとの共演は大変面白く、刺激的です。ウィーンに留学していた頃から憧れていた、吹奏楽や管弦楽にはない楽器とのアンサンブルをする、というひとつの夢を叶えられた場でもあります。今後も未知のアンサンブルや作品と出会って、磨きをかけていきたいと思います!
橋爪:最後に、ロゼッタ エンカウンターに興味を持つみなさまに一言をお願いします。
日下部:日常に疲れた人や何も考えたくない人、もちろん色々考えたい人も、満足いただける公演?になりますので、是非お越しください!
日下部任良(くさかべ ただよし)
京都府出身。広島ウインドオーケストラおよび現代アンサンブルロゼッタ所属。愛知/京都/広島を拠点にソロや室内楽で活動し、しばしば吹奏楽団や管弦楽団のエキストラにも呼ばれている。また京都女子大学非常勤講師、島村楽器音楽教室講師として各地で指導にあたっている。一宮市レジデンスアーティスト。日本管楽藝術学会会員。趣味は珈琲焙煎、サウナ、散歩。
これまでにEMONA国際木管楽器コンクール第2位、マルコ・フィオリンド国際サクソフォーンコンクール第5位など受賞。愛知県立芸術大学音楽学部首席卒業。ウィーン市立音楽芸術大学大学院を最優秀の成績にて修了。
1st.アルバム『CHANT』(レコード芸術特選盤/音楽現代推薦盤)好評発売中。
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