「エンカウンター」特別インタビュー

3/25開催の「エンカウンター」(←公演詳細はリンクから)
公演に先立ち行った、奏者に対する特別インタビューと、作曲家のプロフィールを公開中です。

第1回 柴田高明
第2回 日下部任良
第3回 佐古季暢子
第4回 有馬圭亮


公募作曲家プロフィール

Synthetics 3 – Shifting 
for saxophone and clarinet
by Christian Ferlaino (Italy / Germany)
Tadayoshi KUSAKABE (sax.), Naoko UEDOU (cla.)

クリスチャン・フェルライノは、イタリア生まれのサクソフォン奏者、即興演奏家、作曲家、民族音楽学者。1981年生まれ。現在ベルリンを拠点に活動している。民族音楽学者として、南イタリアのカラブリア地方の音楽を中心に研究し、その成果は彼の音楽の作曲・演奏両面にインスピレーションを与えている。バグパイパーとして中央カラブリアの伝統音楽を演奏、サックス奏者としては即興音楽を専門とし、作曲家としてはジャズと現代音楽のアンサンブルのために作曲を行い、その音楽は世界各地で演奏・放送されている。


Orugananda
for clarinet, mandolin and left hand piano
by Aurès Moussong (Mexico-Hungry)

Takaaki SHIBATA (mand.), Naoko UEDOU (cla.), Keisuke ARIMA (pf.)

アウレス・ムソングは、メキシコシティ出身。スペインの作曲家であるJosé Luis Castilloに師事し、2012年に作曲の学士号を取得。2019年には、ブダペストのリスト音楽院に入学し、作曲の修士号を取得。その後、ベルリン芸術大学でMarc Sabatに師事。2021年には、Ibermusicas作曲コンクールにメキシコ代表として参加し、優勝。2022年には中国浙江音楽学院が開催した作曲コンクールで2位を獲得。現在はフランスのストラスブール音楽院で、作曲のポスト・グラデュエート・プログラムに在籍し、Daniel D’Adamoに師事。彼は、旅行やノマド的生活を創造の養分として、多様な影響を取り入れた音楽作品を制作している。


Transcendental Strains V
for saxophone and guitar
by Desmond Clarke (United Kingdom)
Tadayoshi KUSAKABE (sax.), Kosuke HASHIZUME (gt.)

デズモンド・クラークは、イギリス北部を拠点とする作曲家、演奏家、ビジュアルアーティスト。1989年生まれ。ヨーク大学で作曲の博士号を取得。英国をはじめ、ヨーロッパや北アメリカで広く作品が上演・展示されている。微視的・巨視的なスケールでの原子的・生成的プロセスとその結果的形式の関係を解きほぐす多様な実践を行っている。これまでにArditti Quartet、Ensemble Intercontemporain、Cikada、Philharmonia Orchestraなどのアンサンブルなどと共同。主宰するosc〜などのグループで即興演奏を行う。オーボエ奏者として、Rarescale、Opera dei Lumi、Scarborough Symphony Orchestra、Chimera Ensembleなどと共演。


Uguisu Variations
for guitar, clarinet and piano left hand
by Tomas Friberg (Sweden)
Naoko UEDOU (cla.), Masahiro NISHIDA (gt.), Keisuke ARIMA (pf.)

トーマス・フリーベリは、スウェーデンのストックホルム在住の作曲家。1962年生まれ。エベルハルト・アイゼルに師事し、ストックホルム王立音楽院でダニエル・ベルツに学んだ。その後、ルイ・アンドリーセン、トリスタン・ミュライ、ブライアン・ファーニホウなどに師事しながら、様々な夏期コースや音楽祭に参加している。現在は、日本の福岡に滞在し、日本語と文化を学んでいる。


5000 Miles Apart
for clarinet, guitar and piano
by Gavin Sol Goodrich (USA)
Naoko UEDOU (cla.), Masahiro NISHIDA (gt.), Keisuke ARIMA (pf.)

ギャヴィン・グッドリッチは、ワシントン州とニューヨークを拠点とする作曲家、ピアニスト。純粋数学、ヴィパッサナー瞑想、視覚芸術を統合した作品を制作している。これまでEkmeles、International Contemporary Ensemble、Vibraphone Project Incなど多数の委嘱を受けている。アラスカの漁村に生まれ育ち、YouTubeでピアノや作曲を独学。その後奨学金を得てコロンビア大学を優秀な成績で卒業。現在、フルブライト・グラントを得てスペインのガリシアに滞在中。彼は教育にも情熱を持っており、ガリシアの高校で英語、倫理的価値観、音楽を教えている。趣味は高次元のルービックキューブで、4次元と5次元のパズルを解くことで国際的にランクされている。


Rain Smell (While I’m elsewhere)
for 2 mandolins, 2 guitars, saxophone, clarinet, piano
by Kory Reeder (USA)
Takaaki Shibata, Kyoko
SAKO (mnd.), Kosuke HASHIZUME, Masahiro NISHIDA (gt.), Tadayoshi KUSAKABE (sax.) Keisuke ARIMA (pf.)

コーリー・リーダーは、ネブラスカ州出身、テキサス州在住の作曲家、パフォーマー。ネブラスカ大学カーニー校で作曲の学士号を、ボーリング・グリーン州立大学で作曲の修士号を取得し、現在はノーステキサス大学で博士課程に在籍しながら教鞭を執っている。客観性、場所、即時性、状況、相互作用のアイデアを探求し、視覚芸術、自然、天文学、歴史からインスピレーションを得て、その構造的、哲学的要素を音楽形式に翻訳する。彼の音楽は、Another Timbre、Edition Wandelweiser Records、Sawyer Editions、NCTMMRN、Petrichor Recordsなどからリリースされ、北アメリカ、南アメリカ、アジア、オーストラリア、ヨーロッパのコンサートやフェスティバルで頻繁に演奏されている。また、オペラ、劇場、ダンスプログラムとの共同作業も頻繁に行っている。近年は新進アーティストの現代的で実験的な即興音楽を専門的に紹介するレーベル Sawyer Editionsを運営。また、数々のアーティスト・イン・レジデンスに参加した経験を持つ。

奏者インタビューシリーズ4 有馬圭亮

2023年3月25日ロームシアター 京都ノースホール 公演「エンカウンター」に先立ち、ロゼッタ主宰の橋爪が演奏家メンバーにインタビューを行いました。第四回は立ち上げ公演以来のメンバーで、左手のピアニスト、有馬圭亮さんにお話を伺いました。

橋爪:左手ピアノ、ギター、マンドリンのための室内楽作品を公募する演奏会企画を、2016年に京都芸術センターで開催し、その後発展的にロゼッタを結成したわけですが、有馬くんはその企画から参加してくれている唯一のメンバーです。公募によって集まった新曲を演奏する感覚ってどんな感じですか?

有馬:どの曲も力作で演奏も覚悟がいります。最初はわからないことだらけ、知らない言語を読んでいる気分です。自分のパートの練習を最初はゆっくり、徐々に指定のテンポで、、ものすごく当たり前のことですが、これをひたすら繰り返しているうちに音が体に入ってきます。そして作品の内面に近づくために何度も音を鳴らしながら試行錯誤します。

橋爪:特に左手ピアノの室内楽というのは、独奏に比べてかなりレパートリーが少なく、様々な側面で、自主的に開発していく必要がありますよね。今回演奏するTomas FriebergさんのUguisu Variationはどんな印象ですか?スウェーデンの作曲家で、普段はライブラリアン(図書館司書)として働きながら作曲活動を行っているそうです。現在はなんと日本に語学留学中だそうで、ウグイスを題材に扱っていることからも、日本へ深い興味をもたれている印象です。

有馬:Uguisu Varioationは独特な響きの世界と柔軟さを感じる、今回お気に入りの作品です。

橋爪:手書きの記譜が独特の世界観を醸し出していますよね。こういった公募作品を演奏するために、みなさんがおそらく知らない作曲家や作品の曲を楽しむためにはどういう空間が必要なんだろう、という部分を試行錯誤しているのがロゼッタの活動なのですが、奏者としてはどういう印象を持っていますか?

有馬:会のコンセプトは毎度楽しみです。その思想に理解があやふやな時はありますが。終わってみると深く、面白い会だったといつも振り返っています。演出で印象的だったのは、会場を歩きながら好きな場所で鑑賞できた会。それは子どもの時にやりたかったことでした。

橋爪:前回の公募はそういうコンセプトの作品を公募しましたね。今回もそういう機会をお客さんに提供できるのでは?と思っています。実際前回も子供さんが寝ながら聞いていたり、ということがありましたね。普通のコンサートに比べるとどういうところが魅力だと思いましたか?

有馬:最近、情報がとっ散らかっていて集中する時間が少ないのでは?と思ったりします。私も世間も。音楽鑑賞すらも情報収集のようになっているのではーーーと思う。 ロゼッタの演奏会は没頭する世界です。それはハッピーな時間の過ごし方と思うんです。

橋爪:そうであってほしいと思って制作しています。奏者側の目線としては、どういうモチベーションでロゼッタに参加してくれていますか?

有馬:私は普段古典的な作品を演奏する機会が多いので、新しい作品を扱うロゼッタの活動は発見と柔軟さが得られるものです。アンサンブルの編成も気に入っています。 ロゼッタの中にいるとピアノに新しい音を求められていると感じます。左手のピアノ音楽の分野からみると歴史的に重要になる作品が生まれている現場ともいえるでしょう。

橋爪:元々が左手ピアノ、ギター、マンドリンといった、室内楽分野においてややレパートリーが弱いというと語弊がありますが、メインストリームにいない楽器が集まってともに活動していくことを想定していましたから。今はそこがメインだとは考えていないのですが、引き続き大事に思っている部分ではあります。最後に、ロゼッタ エンカウンターに興味を持つみなさまに一言をお願いします。

有馬:音楽は常に進化を続けていて、その進化を体感できるのがロゼッタのコンサートです。感動と驚きの時間をお届けします。お楽しみに!3/25は是非ご来場ください。

「エンカウンター」は世界各国の作曲家による新作を演奏する公演です。
3/25ロームシアター 京都ノースホールにぜひおこしください!

有馬圭亮(ありまけいすけ)
https://www.instagram.com/chopin0519/

左手のピアニスト。1989年生まれ。大阪教育大学在学中に 局所性のジストニアを発症し、左手によるピアノ演奏を始める。アーティストのコミュニティ「Art village」主宰。世界のローカル音楽のネットワーク作りにも取り組む。活動のテーマは旅・音楽・メディア。

奏者インタビューシリーズ3 佐古季暢子

2023年3月25日ロームシアター 京都ノースホール 公演「エンカウンター」に先立ち、ロゼッタ主宰の橋爪が演奏家メンバーにインタビューを行いました。第三回は立ち上げ公演以来のメンバーで、マンドリン奏者の佐古季暢子さんにお話を伺いました。

橋爪:エンカウンター」では、公募による作品を中心に演奏を行いますが、今回、佐古さんは新曲に関しては委嘱作品のみ参加となります。今年のゲストコンポーザーであるKory Reederは、テキサス大学で博士号を取得した作曲家で、前回の公募で選ばれた作曲家でもあります。どんな印象をお持ちですか?

佐古: Koryの前回の作品“The Rose, 1964“が半即興的で、各楽器のシンプルな音色で共鳴し合う空間がとても心地良かったです。

橋爪:<The Rose>は移ろいながら音楽をその場で組み立てて行くような作品でしたが、今回の新作は、よりしっかりとした構造を持った作品ですが、奏者による自由選択が必要な部分も多く、奏者同士の共鳴が必要不可欠な要素となっていますね。

佐古:今回の新作「Rainsmell (While I’m elsewhere)」も一回一回の公演で響きが変わるのではないかと思うので、どんな音空間が広がるか楽しみです。

橋爪:ロゼッタの演奏活動はこれまで一般的なコンサートとはかなり違った形式で行ってきました。奏者目線で感じる魅力があれば教えてください。

佐古:一般的な演奏会は、お客様にいかに音楽に集中してもらうかという内向きのベクトルですが、ロゼッタは逆のベクトルのように感じています。 一般的な演奏会でも衣装や照明などの視覚的な部分も使われていますが、やはりそこは音楽の為の演出ではないかと思います。 ロゼッタの公演は主宰の橋爪さんや美術担当のメンバーのおかげで、その従来の「コンサート」から解放されようとしているというか…(うまく表現できず申し訳ないです) もちろん音楽も楽しんでもらうんだけども、聴覚、視覚以外にも触覚も使っていたり、バーチャルとの融合であったりと人の認知を活用して、空間と時間自体を楽しんでもらえる公演だと感じています。お客様がこの空間と時間に一歩足を踏み入れていただければ、全身で音を体験できますし、奏者としてはその瞬間瞬間で変わる空間を作り上げる一員になれる気持ちよさがあります。 また、お客様との距離が近いので、お客様の反応が間近で見られるのも楽しみの一つでもあります。

橋爪:制作の意図としては、決して音楽が一つの要素であると考えているわけではなく、音楽という概念を拡張する感覚でやっています。公募という手法を使って、そういったより広い定義で音楽を捉える活動が広まっていけばいいなぁとぼんやりと思っています。奏者のみんなにも楽しんで参加してもらえているようで、大変嬉しく思っています。
そんなロゼッタの活動はご自身の活動の中でどのような位置付けになっていますか?

佐古:新たな出会いの場、とでも言うのでしょうか…言葉にすると、かなり胡散臭い響きですね(苦笑)普段の活動でも定番楽器以外との共演や新曲委嘱などを意識していますが、ロゼッタでは、それこそロゼッタでしか出会うことのできない新しい作品やコラボレーションに刺激をもらっています。

橋爪:最後に、ロゼッタ エンカウンターに興味を持つみなさまに一言をお願いします。

佐古:音楽を楽しみたい方も、新たな音楽に出逢いたい方も、ロゼッタの会場に一歩足を踏み入れた瞬間から最後まで非日常を体験していただけると思います。ぜひ全身で感じる音体験をお楽しみください!

「エンカウンター」は世界各国の作曲家による新作を演奏する公演です。
3/25ロームシアター 京都ノースホールにぜひおこしください!

佐古季暢子(さこきょうこ)
https://www.sakokyoko.com/

広島生まれ。
2003年エリザベト音楽大学マンドリン専攻第1期生として入学。
2009年同大学院修了、渡独。
2011年度中村音楽奨学生に選出。
2013年Hochschule für Musik und Tanz Köln, standort Wuppertal 修士課程マンドリン・ソロ科修了。
これまで多くの演奏会・コンクールにて受賞。
2009年、師 川口氏とのマンドリン二重奏CD「旅立ちの歌」をリリース。
2012年にはマンドリンオリジナル作品のみの独奏コンサートを開催。
2014年11月には日本初演を含めたマンドリンオリジナル作品のみ、文学をテーマにした帰国リサイタルを開催(クラシックギター上垣内寿光)。
2016年には世界的なギタリストである佐藤紀雄氏と、マンドリンの新たな可能性を探る『新響地』と題した公演を行った。
2018年にはマンドリン独奏による『響界』にて、エレクトロニクスとの委嘱初演作品「Sign of the Times」(今井慎太郎)とマンドリン版初演となる「Piano Phase for two pianos」(Steve Reich)を演奏する。

​日本をはじめドイツ、フランス、韓国など世界各国で演奏活動を実施。アンサンブル・ノマドや現代音楽アンサンブルロゼッタなどに意欲的に参加し、現代音楽の初演・再演に取り組んでいる。
国内唯一のマンドリンの専門誌『奏でる!マンドリン』にて世界の新曲紹介記事を担当しており、演奏会なども含め特に国内での新曲紹介に努めている。
また、後進の指導にもあたっており、多数の子供のためのワークショップに講師として参加、ヒルデン市立音楽学校のマンドリン科講師を勤め、2013年4月よりエリザベト音楽大学マンドリン科非常勤講師に就任。
これまで川口雅行、Caterina Lichtenberg教授、Annika Hinsche、Jeannette Mozos del Campo、Silke Liskoの各氏に師事。

奏者インタビューシリーズ2 日下部任良

2023年3月25日ロームシアター 京都ノースホール 公演「エンカウンター」に先立ち、ロゼッタ主宰の橋爪が演奏家メンバーにインタビューを行いました。第二回は立ち上げ公演以来のメンバーで、サクソフォン奏者の日下部任良さんにお話を伺いました。

橋爪:エンカウンター」では、公募による作品を中心に演奏を行いますが、日下部さん担当の作品の一つ「Synthetics 3 – Shifting」は、イタリア出身、ドイツ在住の作曲家、Christian Ferlaino(クリスティアン・フェルライーノ)の作品です。ジャズ・サクソフォニストでもある彼の作品、どのような印象ですか?

日下部:作品タイトルは直訳すると「合成物質、3つの変移」みたいな感じになるのかなと思います。作品のありかたとしては、サクソフォンとクラリネットがそれぞれ独立しつつも常に関係性を意識して存在しています。その有り様は日常に使われる「物」以前の「何か」が、有機的に関わりあったり、無関心だったり、突然活発になったり…。未知の小さな生物?がウヨウヨ、ぴょこぴょこしているようにも感じます。聴いている方にはどのように聴こえるのでしょうか?

橋爪:どのように聞こえるか楽しみですね。ロゼッタの演奏会では斬新な作品の演奏はもとより、それらの作品をどのように提示するか、についていつも様々なアプローチをとっています。日下部さんはそういったアプローチに対し、どのように感じていますか?

日下部:「作品」を「演奏する」というよりは、「音楽を素材に空間をデザインする」という印象、魅力があると思います。形式的なコンサートのあり方にとらわれず、それは言い換えるとただ座って演奏を受容すると言うことにとどまらず何かしら能動的にお客さんが演奏に、演奏の中に参加するような感覚に近いのですが…。コンサートホールや室内楽ホールで音楽を聴く、というよりは、音楽という作品を自ら歩き回って鑑賞する、美術館に感覚的には近いかもしれません。座布団やソファなどを敷いて開演した公演もありましたね!

橋爪:そうですね!音楽を表現し、共有する方法をデザインしている感覚で制作しています。 ロゼッタはオーケストラにいない楽器がほとんどと編成もかなり特殊、活動内容も一般的な団体とは違っています。日下部さんは広島ウインドオーケストラでの活動や、近年も大阪フィルハーモニー交響楽団のボレロに乗ったりと、メインストリームのオーケストラやアンサンブルでの活動もされていますが、日下部さんにとってロゼッタはどの様な活動の場となっていますか?

日下部:自分だけではやらない、なかなか関わらないであろう作品と交流する場。そして表現の可能性を探究する場、音楽のある空間とは?を意識する場となっています。特に、ギターやマンドリンとの共演は大変面白く、刺激的です。ウィーンに留学していた頃から憧れていた、吹奏楽や管弦楽にはない楽器とのアンサンブルをする、というひとつの夢を叶えられた場でもあります。今後も未知のアンサンブルや作品と出会って、磨きをかけていきたいと思います!

橋爪:最後に、ロゼッタ エンカウンターに興味を持つみなさまに一言をお願いします。

日下部:日常に疲れた人や何も考えたくない人、もちろん色々考えたい人も、満足いただける公演?になりますので、是非お越しください!

「エンカウンター」は世界各国の作曲家による新作を演奏する公演です。
3/25ロームシアター 京都ノースホールにぜひおこしください!

日下部任良(くさかべ ただよし)
京都府出身。広島ウインドオーケストラおよび現代アンサンブルロゼッタ所属。愛知/京都/広島を拠点にソロや室内楽で活動し、しばしば吹奏楽団や管弦楽団のエキストラにも呼ばれている。また京都女子大学非常勤講師、島村楽器音楽教室講師として各地で指導にあたっている。一宮市レジデンスアーティスト。日本管楽藝術学会会員。趣味は珈琲焙煎、サウナ、散歩。
これまでにEMONA国際木管楽器コンクール第2位、マルコ・フィオリンド国際サクソフォーンコンクール第5位など受賞。愛知県立芸術大学音楽学部首席卒業。ウィーン市立音楽芸術大学大学院を最優秀の成績にて修了。
1st.アルバム『CHANT』(レコード芸術特選盤/音楽現代推薦盤)好評発売中。
https://www.tadayoshikusakabe.com

奏者インタビューシリーズ1 柴田高明

2023年3月25日ロームシアター 京都ノースホール 公演「エンカウンター」に先立ち、ロゼッタ主宰の橋爪が演奏家メンバーにインタビューを行いました。初回は立ち上げ公演以来のメンバーで、マンドリン奏者の柴田高明さんにお話を伺いました。

橋爪:「エンカウンター」では、公募による作品を中心に演奏を行います。柴田さん担当の作品は、メキシコ出身でハンガリー国籍も持つ作曲家Aurés Moussong(オーレス・ムーソング)による「Orugananda」です。ムーソングは、メキシコで学位を取得したあと、ハンガリーのリスト音楽院の修士課程に進み、その後、ベルリン芸術大学やストラスブール音楽院など、ヨーロッパ各地の音楽学校で作曲を学んだ経験を持つ、多様なバックグラウンドを持った作曲家です。今回演奏する「Orugananda」はクラリネット 、マンドリン 、左手ピアノのための作品で、彼の亡き父で小説家の同名短編小説をモチーフにした作品です。演奏者としてこの作品に対しどのような魅力を感じていますか?

柴田:ロゼッタの特徴でもあると思うのですが、異種楽器が混ざり合うことでロゼッタ独自の響きが生まれること。今回の曲でも、やはりその魅力が一番印象的です。私の演奏曲「Orugananda」では、3つの楽器が幼虫の不思議な動きを表現します!

橋爪:大変哲学的な幼虫、いわゆる芋虫の思想についてユーモラスに表現した超短編小説が題材になっているのですが、詩的な音楽によって、拡張的に表現されているのが魅力的な作品ですね。
柴田さんは近年はマンドリン独奏によるリサイタルシリーズに注力されたり、ご自身が主宰するマンドリンオーケストラ・ギルドにおいても、現代音楽に積極的に取り組まれています。その中でもクラシック音楽の文脈の中で、古典的なレパートリーと現代音楽とのつながりをしっかりと提示するような、ヨーロッパの伝統的な手法・視点を用いながらも、日本の作曲家の作品を大事にしながら演奏会を組み立ててらっしゃる印象です。ご自身の普段の活動とロゼッタの活動は違った視点と共通する部分があると思いますが、どういった印象をお持ちですか?

柴田:ロゼッタの活動は、新たな世界との接点として、自身にとって無くてはならないものです。マンドリンって、ヨーロッパの伝統音楽の文脈に生きた楽器なのに、ちょっと閉じられた独自の世界をつくっているんです。オーケストラ楽器の演奏家にもよく知られていなかったり、電車でも知らない人に「これ何ですか?」と声かけられたり。でも、マンドリンの世界は、中に入ると意外と広かったりする。私自身も、この閉じられたマンドリンの世界にどっぷり浸かっている人間です。内向きと言われればそれまでですが、だからこそ見えてくることがある、特に近年続けている「マンドリン無伴奏の世界」シリーズでは重視してる視点です。ロゼッタでの活動は、公募や委嘱による最新の音楽に触れることができ、色々な楽器による普段と違う音を体験、そして室内楽で混ざり合うことができる。ロゼッタならではの新鮮な演奏会の在り方も、リサイタルやマンドリンオケの伝統的な演奏会スタイルを行う中でも大切なスパイスとなっています。実際に、ロゼッタにてご一緒した作曲家の方に個人的に委嘱する機会もありました。

橋爪:ロゼッタでも作品を委嘱した中堀海都さん、山根明季子さんの無伴奏作品も初演されていますよね!ロゼッタ自体が奏者にとって広がりをつくる「場」であってほしいというのは、主宰者としてとても大切に考えていることなので、実際に積極的にロゼッタでの出会いを拡張してくださっている姿にはいつも刺激を受けています。今年の無伴奏マンドリンシリーズ(東京京都)では世界的に活躍されている藤倉大さんに委嘱された「Quill」のほか、橋爪の新作「Light Leaks」も演奏していただく予定です!
マンドリンへの思いについてもう少しお聞かせください。

柴田:私は、マンドリンはより外に向けて歩みを進めないといけないと考えています。これは、私個人とロゼッタの活動で共通する部分だと思います。
ロゼッタは、伝統的な文脈を踏まえた上で、新しい音楽や演奏会の在り方を模索している団体だと思うのですが、そのクリエイティブな場所にマンドリンがあること、様々な楽器と室内楽でつながること。これは、マンドリンがより開かれた外の世界に歩みを進める上で非常に大切と思います。
私個人としては、より伝統に軸を置き、内向きな視点を深めることで新しいマンドリンの世界を見出して発信していきたいと考えています。

橋爪:ありがとうございます。ロゼッタと柴田さんの間にはしっかりと境界がありながらも、その境界自体はとても曖昧で横断可能なものである、ということがロゼッタのコレクティブとしての価値を高めてくださっていると感じています。
最後に、ロゼッタ/エンカウンターに興味を持つみなさまに一言お願いします。

柴田:様々な楽器の特徴、様々な編成、様々な作品を、クリエイティブなコンセプトで楽しめる演奏会、どうぞ新たな刺激を感じにご来場ください!
 

「エンカウンター」は世界各国の作曲家による新作を演奏する公演です。
3/25ロームシアター 京都ノースホールにぜひおこしください!

柴田高明
https://www.shibataka.com/
ドイツ・カッセル音楽院器楽教育課程マンドリン科にて学ぶ。 日本やドイツのマンドリン独奏コンクールに数多く入賞。2006年の帰国以降リサイタルを国内各地で開催し、CDはこれまでに日本国内盤「麗しき薔薇を知る者」「クロニクル~マンドリン音楽の300年」「冬のエレジー~マンドリンと弦楽トリオの為の現代邦人作品集」を、またドイツにて「sky blue flower」を発 売。レパートリーは幅広く、現代音楽の分野でもロゼッタのメンバーとしての活動の他、多くの新作初演を行なっている。 ソリスト・講演者として、ヨーロッパの国際音楽祭や国際シンポジウムに招待参加。マンドリン専門誌「奏でる!マンドリン」では,2008年の創刊当初よりマンドリンの歴史や奏法などに関する記事を連載するなど、演奏・研究両面で広く活躍している。マンドリンオーケストラの分野でも、マンドリンオーケストラ・ ギルドを主宰、またフィラルモニカ・マンドリーに・アルバ・サッポロのゲストコンサートマスターの他、 宇治マンドリンアンサンブルフローラ、京都大学マンドリンオーケストラ各技術顧問、ジャパン・スーパー ユース・マンドリンオーケストラ1stマンドリン講師を務める。 大阪音楽大学ギター・マンドリン専攻非常勤講師。日本マンドリン独奏コンクール、並びに全国高等学校ギター・マンドリン音楽コンクール各審査員。 木下正紀、G.ワイホーフェン、S.トレッケルの各氏に師事。

2019年度公募「枠の無い音楽」選考結果

2019年度公募「枠の無い音楽」採用作品を発表します。
以下の2作品を、2019年8月10日に京都芸術センターで行われる公演
「フレームを超えて」にて初演いたします。

  • The rose, 1964 / Kory Reeder
  • Meditations for keyboards and string instruments / Andreja Andric

今回応募してくださった全ての「枠の無い音楽」に対して大変感謝しております。今回の選考は、私たちのプロジェクトに合致しているかどうかを重要なポイントとしていたこと、一作品30分という長い演奏時間をとることから、限られた作品しか選べませんでしたが、残念ながら選外となった作品の中にも、多くの佳作がありました。本当にありがとうございました。
選外作品にも是非演奏機会が訪れることを強く願っております。

フレームを超えて

フレームを超えて “Without Framing”

近づいたり、離れたり、じっと座ったり。
フレームを超えるのは、いったい何か?

ロゼッタは第4回目のプロジェクト「フレームを超えて」を開催します。
「枠の無い音楽」というテーマによって行われた作品公募に対し
世界中から50以上の作品応募がありました。
同じテーマに挑んでいただくゲスト作曲家
山根明季子、オースティン・イップの両氏による作品と
公募から選ばれた作品はどのようにフレームを超えるのか。
ゲストキュレーターにバロンタン・ガブリエを迎え
ロゼッタ独自の表現空間を作り上げます。

2019年8月10日 開催
会場: 京都芸術センター講堂

京都芸術センター Co-program カテゴリーDKACセレクション」 採択企画
主催: ロゼッタ 共催: 京都芸術センター

※開演時間等の詳報は5月末発表予定です

 

2017年公募「アジア回廊」

2017年ロゼッタ作品公募「アジア回廊」

ロゼッタは、2018年2月12日、京都芸術センター講堂で、KAC TRIAL PROJECT / Co-Program 2017 カテゴリーA「共同制作」(公演事業)採択企画として、結成公演を行いました。公演で演奏する作品の公募を開催し、2017年11月26日に応募をしめきりました。(公募内容については下部に記載)
オーストラリア、オーストリア、ボスニア、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、キューバ、ドイツ、ギリシャ、香港、インドネシア、イラン、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、メキシコ、オランダ、パキスタン、ペルー、プエルトリコ、ルーマニア、ロシア、セルビア、シンガポール、スロベニア、スペイン、スウェーデン、英国、北アイルランド、アメリカ合衆国、ヴェネズエラなど世界中30を超える国と地域から、95作品の応募がありました。
選考は、ゲストコンポーザーの中堀海都 、池田 萠(作曲家/2016年度公募採用作曲家)両氏、に加え、勝冶真美氏(京都芸術センター プログラムディレクター)とロゼッタの演奏メンバーによって行われました。

採用作品

Category A (saxophone+guitar+mandolin+piano)

Towards a Harmonious World II / Chris Hung (Hong Kong)
If only… / Moises Camargo Cano (Mexico)

Category B (Saxophone+guitar / saxophone+piano)

The Emperor’s Soliloquy / Austin Yip (Hong Kong / UK)
piece for saxophone and left-hand piano 1″Kyoto” / Wilson Leywantono (Indonesia)
FushiMI Inari and Sanjusangen-DO Sax. Pf. / Fabio Luppi (Italy)

Category C (guitar&mandolin duo etc.)
La Revedere – Sonambuco / Diego Felipe Gaitán Lozano (Columbia)
Banned. . . unbound / Stephen de Filippo (Australia)

———

また、以下の作品については、ロゼッタ独自の選出作品となります。
京都芸術センターでの「未知の空間」では演奏いたしませんが
2018年夏「音色の交差点」で演奏されました。

For Left Hand Piano

6 Aphorisms for left hand / Gerardo Gerulewicz (Venezuela)
Five Monologues / Kari Watson (USA)

 

For Guitar

I Wander Through an Underwater Forest / Martín Quiroga (USA)
Ouroboros Miniatures / Gabriel Bolaños (USA)
Eyewitness of His Majesty / Anselm McDonnell (UK / Northern Ireland)
– I Bartholomew, the Scholar,
– VI Judas, who betrayed him

 

For Mandolin

Mandorion / Malancioiu Gabriel (Romania)

For Guitar & Mandolin 

Interiors of a Courtyard / Geoffrey Gordon (USA)

for Saxophone

SILLABARIO DEI TEMPI INCERTI (IIa) / MARCO MOLTENI (Italy)
medi+aTion / Emily Koh (Singapore)

(以上)

公募についての詳細は以下からご覧ください。


楽器リスト

楽器群 A:
マンドリンx2 (一台に限りマンドラに変更/持ち替え可 )
クラシックギターx2

楽器群 B:
サクソフォン (ソプラノ・アルト・テナー、他の種類については要相談)

楽器群 C:
左手ピアノ

注意点:
ピアノは内部奏法可。ただし左手で行えるものに限る。右手による補助的な動作については事前に確認すること。ピアノは一台しか使用しませんので、調律への大きな影響や、清掃等で演奏会が円滑に行えないような奏法やプリペアドに関しては不可とします。(簡易なものは可)
*マンドリン、マンドラに関しては、トレモロ、ピッキング奏法を明確に記してください。


Category A (Quartet to Sextet)

  • 編成 楽器リストより全ての楽器を含む編成。但しギター・マンドリン(もしくはマンドラ)については各々一台ずつでも可。
  • 演奏時間 最長8分程度 (単一楽章・多楽章を問わない)

    Category B (Duo to Quintet)

  • 編成 楽器リストより、必ず二つ以上のグループから楽器を選んだ編成。(楽器群Aの撥弦楽器のみのデュオ、トリオ、カルテットは不可。)
  • 演奏時間 最長8分程度 (単一楽章・多楽章を問わない。)

    Category C*  (Performer’s Selection)

    *このカテゴリーは結成公演以外の公演で演奏する可能性があります。

  • 編成 楽器リストの楽器のソロ作品、楽器群Aの撥弦楽器より選択したデュオ作品。
  • 演奏時間 最長6分程度
  • このカテゴリーに限り、未出版、かつ日本で未初演の既存作品も応募可。

注意事項

  • 募集テーマ「アジア回廊
    応募作品が採用された場合、アジア(京都)で初演を迎えることになります。その意義について意識していただくよう「アジア回廊」というテーマが設定されています。応募作品がアジア的である必要や、作品のテーマをアジア的にする必要は全くありません。
    (Category Cにはテーマは反映されません。)
  • 締切 2017年11月25日
  • 参加費・年齢制限 無し
  • 既に初演、もしくは出版されている作品の応募は不可。
  • 各カテゴリーにつき1作品までの応募とする。同一カテゴリー複数応募は不可。
  • 選考は、当日、委嘱作品(新作)を発表するゲスト作曲家と、作品の初演を担当する演奏家によって行われる。カテゴリーA/Bに関しては作曲家を中心に、カテゴリーCに関しては演奏家を中心として選考を行う。
  • 選考結果は2017年12月10日までにウェブサイト上で発表される。

選考委員
中堀海都 (作曲家)
池田 萠 (作曲家/2016年度公募採用作曲家)
勝冶真美(京都芸術センター プログラムディレクター)
ロゼッタ (メンバーはこちら)

主催:ロゼッタ / 京都芸術センター
助成:平成29年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業


採用者・作品について

カテゴリーA/B

  • 採用された際は速やかにパート譜の提供をお願いします。
  • 作曲に対する金銭的報酬はありません。
  • 著作権は作曲者に帰属しますが、演奏会当日の初演まで、演奏権を移譲する合意をしていただきます。
  • リハーサルは、関西地方(主に京都)で行われます。
  • 遠隔地にお住まいのかたは録音・ネット中継等の方法でリハーサルを行います
  • 初演とともに2018/2/12の演奏会に招待します。(交通費・滞在費は支給されません。)来場が難しい場合、初演の録音を差しあげます。
  • 「採用作品をLPC Japanより音楽配信(iTunes/Amazonやspotify等)します。
    (※印税等の条件に合意した場合に限ります。この合意はLPC Japanと採用者の二者間で取り交わすこととします。)
  • 選考された作曲家の中から1名程度に、翌年度のロゼッタ主催公演のゲスト作曲家として、作品委嘱のオファーをします。(委嘱料は日本円で5万円とします。またオファーを受ける場合、翌年度の公募選考委員も担当していだきます。)

カテゴリーC

  • ロゼッタ主催の演奏会、もしくはロゼッタメンバーによる個々の活動で演奏機会を提供します。(機会については2018年中を目処とします。)
  • 作曲に対する金銭的報酬はありません。
  • 著作権は作曲者に帰属します。
  • リハーサル等は演奏を担当するメンバーとの調整の上行います。
  • 初演に立ち会えない場合、録音をさしあげます。